サッシの断熱性能(熱貫流率)を考えてみる
2017年 03月 30日
住宅の断熱性能を今以上に向上させるためには、断熱性能の高い窓が必要です。
アルミサッシは軽量で加工性が良く高耐久性から重宝されていますが、熱伝導性の良さが最大の欠点です。そこで、サッシの各パーツを外部と内部で二分し内部側にプラスチック樹脂を利用し内部への熱の侵入を抑えたものが複合サッシと呼ばれるものです。この複合サッシに空気層が10mm以上の複層ガラスを嵌めた窓の熱貫流率Uは3.49となります。それでも壁と比べると断熱性能が低いと言わざるを得ません。
アルゴンなどのガスを中空層8mm~16mmで封入した特殊な金属膜を設けたLow-E複層ガラスを複合サッシと組み合わせると熱貫流率Uは2.33となります。中空層を16mm以上にすると熱貫流率Uは2.15となります。
熱伝導性の高いアルミニウムを用いたサッシの断熱性能を向上できるのはここまでです。
これ以上に断熱性能の良いサッシとして販売されているのはアルミを使わずオールプラスチックの樹脂サッシです。樹脂サッシと10mm以上の中空層のペアガラスの組み合わせでU=2.91、10mm以上のLow-E複層ガラスでU=2.33、12mm以上のガス封入Low-E複層ガラスでU=1.90となります。
ペアガラスでできるのはここまでで、窓にこれ以上の断熱性能を与えるにはトリプルガラス以上の複層ガラスが必要です。
樹脂サッシにLow-Eトリプルガラスを嵌めるとU=1.70となり、Low-E膜を2枚以上にしたトリプルガラスを用いるとU=1.60となります。
アルミサッシ、樹脂サッシほど普及していませんが、樹脂サッシと同等の断熱性能として扱えるものに木製建具があります。上記の数値は樹脂サッシをそのまま木製サッシと読み替えることができます。複合サッシもアルミ+樹脂だけでなくアルミ+木製の複合サッシもあり、室内側が木製になったものは上記の樹脂とアルミの複合サッシの数値と同値です。
ここまでの熱貫流率の数値は、(国研)建築研究所「平成28年省エネルギー基準に準拠したエネルギー消費性能の評価に関する技術情報(住宅)」による数値ですが、JISで定められた試験方法によりこれ以上に良い数値を誇る商品を各建具メーカーが個別に開発しています。
例えばペアガラス樹脂窓では、YKKapのAPW330はU=1.48、LIXILのエルスターSはU=1.30、三協立山のスマージュはU=1.40です。高性能トリプルガラス樹脂窓では、YKKapのAPW430はU=0.91、LIXILのエルスターXはU=0.79、三協立山のトリプルスマージュはU=0.86となっています。
さて、現在市販されているサッシで最高の数値となる商品は、LIXILのレガリスでその熱貫流率Uは外壁に匹敵する0.55です。ガラスはなんと高性能ガスを封入した5層ガラスです。
さて、窓も高断熱化を図ることができることはわかりました。いざ、採用するにはコストも気になるところです。これらの比較に当り、三協立山のサイトで目安として公表している価格を用いたいと思います。建具のサイズ形式はw1690mm×h2030の引き違いの掃出し窓です。
アルミサッシにペアガラス(U=4.07)では6.1万円、これを複合サッシにペアガラス(U=3.49)にすると8.9万円になります。ガス入りLow-E複層ガラスを用いた樹脂サッシ(U=1.40)では18.1万円~、高性能トリプルガラス樹脂窓(U=0.86)では29万円~となっています。
コストアップの要因にはなりますが、ここ何回かでお話ししたように日本の住宅の断熱性能は低すぎます。壁だけでなく窓・ドアの開口部の断熱性能にも注目しないといけません。これからはもう少し木製サッシに注目が集まるのではないでしょうか。