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アルミカーポートと確認申請について

ずいぶん以前の2010年06月16日にアルミカーポートの確認申請を通してきた事を書きましたが、今でも私の記事ランキングTop10に常に入っているようです。気になる方が多くいらっしゃるようですので、補足も入れて確認申請上のカーポートの取り扱いについてまとめておきます。ただ、実務で住宅の確認申請を多数こなしていらっしゃる方には、当然で既知の事ばかりで、特に目新しいことはありません。

確認申請の当時指摘された要件を記事から抜き出します。
構造欄には「アルミ造」でも「アルミニウム造」でもなく、「アルミニウム合金造」と記入してくださいとの事です。(詳細は下記「構造」の解説内にあります。)
それと、屋根パネルが安全に取り付けられており十分な耐風性があるかを確認するため、屋根廻りの詳細図を添付して欲しいとの事でした。詳細図はメーカーの製品サイトからダウンロードして入手した物をそのまま添付しました。基準法関連で添付図書として要求される図書ではないでしょうから、これは各主事によって対応が異なると思います。
このような指摘事項でした。当時の業務の進捗状況を一部紹介しただけの記事だったので、詳細な内容には踏み込んで書いていませんでした。

アルミカーポートと確認申請について_e0000025_16465543.jpg

もう少し詳細な内容をお知らせしたいと思います。

面積関係
まずは面積算定にかかわる内容です。
カーポートの床面積、建築面積の算定の際に必要な法令関係に、「建築基準法施行令第2条第1項第二号の規定に基づく国土交通大臣が高い開放性を有すると認めて指定する構造 」(平成5年 建設省告示1437号)があります。施行令第2条は「面積、高さの算定方法」について定めたもので、第1項第二号はその中で「建築面積」の算定方法について書かれています。

施行令第2条第1項第二号
建築面積 建築物(地階で地盤面上一メートル以下にある部分を除く。以下この号において同じ。)の外壁又はこれに代わる柱の中心線(軒、ひさし、はね出し縁その他これらに類するもので当該中心線から水平距離一メートル以上突き出たものがある場合においては、その端から水平距離一メートル後退した線)で囲まれた部分の水平投影面積による。ただし、国土交通大臣が高い開放性を有すると認めて指定する構造の建築物又はその部分については、その端から水平距離一メートル以内の部分の水平投影面積は、当該建築物の建築面積に算入しない。


このただし書きにある「国土交通大臣が高い開放性を有すると認めて指定する構造」を指定しているのが、建設省告示1437号です。

平成5年 建設省告示1437号
建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)第二条第一項第二号の規定に基づき、国土交通大臣が高い開放性を有すると認めて指定する構造は、次に掲げるものとする。
一 外壁を有しない部分が連続して四メートル以上であること
二 柱の間隔が二メートル以上であること
三 天井の高さが二・一メートル以上であること
四 地階を除く階数が一であること


片持ち柱や4隅に柱が配されたものにかかわらず一般的なカーポートだと建設省告示1437号に該当すると思います。この建設省告示1437号で示された条件を満たしていることを、平面図(屋根伏図)、立面図などで示します(証明します)。

施行令第2条第1項第二号から、水平投影して端から1mの部分が建築面積に含まれません。これは4周の端から1mが除外されるので、水平投影で5.0m×2.8mのカーポートの場合の建築面積は3.0m×0.8mで2.40平方メートルとなります。

一方、床面積について、カーポートは屋根の下部は全て駐車スペースとしての用途が発生するので、屋根の水平投影全てとなる5.0m×2.8m=14.00平方メートルが床面積として取り扱われます。(実際には柱芯などを用いて算定するので、完全な屋根の水平投影面積よりも小さくなります)

ただし、令第2条第1項第四号の規定により合計の1/5を超えない範囲で容積率(法52条第1項)の算定用面積には算入しなくてよい事になります。

柱と屋根の位置関係によって車を止められない事が明らかで、人が通行するだけのスペースはピロティとみなして床面積に算入する必要はありませんから主事に確認をした方が良いでしょう。また、他の建物との位置関係が問題になる場合も、主事と調整する必要があるでしょう。

構造
構造について該当する法令は、令第80条の2(構造方法に関する補則)です。

令第80条の2
第三節から前節までに定めるもののほか、国土交通大臣が、次の各号に掲げる建築物又は建築物の構造部分の構造方法に関し、安全上必要な技術的基準を定めた場合においては、それらの建築物又は建築物の構造部分は、その技術的基準に従つた構造としなければならない。
一 (省略)
二 木造、組積造、補強コンクリートブロック造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造及び無筋コンクリート造以外の建築物又は建築物の構造部分


アルミニウム合金造の建築物の構造に関して「国土交通大臣」が「安全上必要な技術的基準を定めた」ものが、平成14年国土交通省告示 第410号(改正告示第607号)です。このときアルミニウム合金に関する告示第408号、第409号が同時に公布されています。これら一連の告示で「アルミニウム合金(造)」と明記されています。

この平成14年の一連の告示により、アルミニウム合金の建築材料としての品質、構造計算に必要な材料としての強度、アルミニウム構造の構造方法に関し安全を確保するため構造計算による確認と併せ適合要件とされる技術基準などが示されたことにより、確認申請上のアルミニウム合金造の建築物の取り扱いが容易になりました。

これ以前は、材料の品質や構造計算をするための強度などを独自に実験などで確かめたりなどして証明した上に、構造的な安全性を独自に示す必要があり、正規に確認申請上で取り扱うのが非常に困難な状況でした。そこで、工事完了後に黙ってカーポートを設置するという風潮があったわけです。行政も正規に確認申請を出されても取り扱いが非常に困難なので、この風潮を黙認していたわけです。

アルミニウム建築構造協議会:アルミ建築構造の告示
(https://www.aluminum.or.jp/alken/notice/index.html)

令第80条の2、実際には告示への適合確認を示すことになります。確認申請書類中、建築物別概要の備考欄に「国土交通省告示第410号、第607号準拠」と記入します。そして、準拠していることが確認できる書類の添付が求められる場合があります。該当部分が明示されたカタログのコピーの添付で済む場合もありますし、メーカーから適合確認書を取り寄せて添付してくださいと言われる場合もあります。メーカーの適合確認書はネット上でダウンロードできるようにしてあったり、問い合わせて送付してもらう場合もあります。

カーポートなどのカタログでは、商品の紹介ページの最初の商品名の横に「告示410号・607号準拠」の表示がされていたり、もしくは巻末に参考資料として「建築基準法対応について」「告示への対応」などとしてまとめられていたりします。

市販のカーポートは全て告示に適合した商品が販売されていると思われますが、カーポート選定の際には告示の適合状況を事前に確認しておく方が安心です。

屋根材・防火関係
防火関係で気を付けないといけないのが、屋根と外壁の構造です。一般的なカーポートの場合は、壁が無いでしょうから、残る屋根材の不燃・防火の扱いなどに気を付けます。特に、市販のカーポートの屋根の多くに樹脂素材が利用されています。この樹脂素材の可燃性に気を配る必要があります。

一般的なカーポートの場合、法84条の2(簡易な構造の建築物に対する制限の緩和)で定められた建築物に該当すると思います。

法第84条の2(簡易な構造の建築物に対する制限の緩和)
壁を有しない自動車車庫、屋根を帆布としたスポーツの練習場その他の政令で指定する簡易な構造の建築物又は建築物の部分で、政令で定める基準に適合するものについては、第22条から第26条まで、第27条第1項及び第3項、第35条の2、第61条から第64条まで並びに第67条の3第1項の規定は、適用しない。


法第84条の2の「政令で指定する簡易な構造の建築物又は建築物の部分」がどういうものかは令第136条の9で指定されていますが、その令第136条の9で再度「国土交通大臣が高い開放性を有すると認めて指定する構造の建築物」と指定されます。「国土交通大臣が高い開放性を有すると認めて指定する構造の建築物」は平成5年 国土交通省告示第1427号で仕様が定められています。これらは、建築物の用途や規模を制限しています。

次に、法第84条の2の中の「政令で定める基準」は、令第136条の10です。主要構造部である柱および梁や、外壁・屋根などの構造についての仕様が防火地域などの地域別に定められています。

法第84条の2の「政令で指定する簡易な構造の建築物又は建築物の部分」で「政令で定める基準」に適合すると、防火地域又は準防火地域内の建築物の屋根の構造を制限している法第63条、防火地域及び準防火地域以外の市街地について指定する区域内(22条区域)にある建築物の屋根の構造を制限している法第22条の屋根の構造に関する規定が適用除外となります。

ただ、令第136条の10第三号で、開放的簡易建築物であっても自動車車庫に該当する建物は「主要構造部である柱及びはりが準耐火構造であるか、又は不燃材料で造られており、かつ、外壁および屋根が準耐火構造であるか、不燃材料で造られているか、又は国土交通大臣が定める防火上支障のない構造であること」と定められています。

主要構造部」となる柱および梁はアルミニウム合金で「準耐火構造」にはならずとも「不燃材料で造られて」います。「かつ、」でさらに「外壁および屋根」の構造が定められています。樹脂パネルは「準耐火構造」には該当しなくても「不燃材料で造られている」に該当する商品はあるでしょう。さらに、不燃材料でない樹脂パネルを用いても「国土交通大臣が定める防火上支障のない構造」であれば良いことになります。

この「国土交通大臣が定める防火上支障のない構造」を定めているのが、平成12年建設省告示第1443号(防火上支障のない外壁および屋根の構造を定める件)です。告示第1443号では、建物の面積規模ごとに外壁と屋根に使っても良い材料が定められています。これにより150㎡未満の開放的簡易建築物の屋根には最低でも準不燃材料以上のものが求められます。

ポリカーボネート板など樹脂製品の場合は、選定時に認定番号などを確認しておきます。確認申請書の棟別概要書の屋根の欄に材料名と認定番号を書き込みます。

以上、戸建て住宅でのカーポートの確認申請に関わる話でした。

Commented by nukky at 2021-01-19 15:26 x
平成5年 建設省告示1437号に、天井の高さが二・一メートル以上であること という項目がありますが、アーチ状の屋根の場合、一番低い天井高さとなるのでしょうか?
Commented by imtom at 2021-01-20 08:40
> nukkyさん
居室の最低天井高さなどで用いられる「天井の高さ」は平均の天井高さで判断されます。(施行令第21条2項)に書かれているのですが、これは居室の天井の高さを判断する場合に限った表現となっています。

駐車場の天井高さも平均の高さで良いのかなどどこを天井の高さというかについては主事判断になりそうです。建築主事の判断によっては平均で良いとされることもあろうかと思いますが、「一番低い天井高さ」で取り扱われるのが安心かと思います。カーポートの高さをギリギリまで低くしたい時は確認申請を提出する機関に事前に確認されておく必要がありそうです。
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by imtom | 2018-03-17 16:48 | 設計・監理の仕事 | Trackback | Comments(2)

兵庫県姫路市で住宅設計を生業とする建築士、今村智則の徒然記


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